本人が最初に書いている通り興奮しているせいにしても、恋に悩むその様がありありと見られて読んでいるうちにこちらの心が締め付けられるような気持ちになります。
どんな関係になってもそばにいてくれるだけでいいと思えるほど大切な恋愛だったのでしょう。
【三】竹久夢二
代表作:「黒船屋(絵画)」「宵待草(詩)」
おしま(長谷川賢子)へ
けれどその幸福は共に未来に属すべきものだ、未来のために今日を犠牲にするのは僕の趣味にもとるものだ、イヤ、千万の理論は何の心慰めにもならぬ。逢いたい 逢いたい。千九百十一年一月四日 夜一時三十分出典:
恋の寂しさに理論は通用しません。
心のなかで理論で片付けられるものならどんなにいいだろうと、思った経験は恋をしたことがあれば一度はあるのではないでしょうか。
【四】島村抱月
代表作:「新美辞学」(劇団・芸術座の設立に携わるなど芸術方面での活躍がある)
松井須磨子へ
あなたのことを思えば、ただうれしい。世間も外聞もありはしない。すぐにも駈け出して抱いて来ようかと思うほどです。あなたはかわいい人、うれしい人、恋しい人、そして悪人、ぼくをこんなにまよわせて、此上はただもうどうかして実際の妻になってもらう外、ぼくの心の安まる道はありません。ぼくはどうかして時機を作るから、それまで必ず待っていてちょうだい。出典:
【五】田宮虎彦
代表作:「落城」「足摺岬」
妻である平林千代へ
千代淋しくてしかたがないので手紙を書く。二日会わないのだね。明日は会えるのだ。もう暫くすれば、こんないらだたしさはなくなって了う。だがどんなに待遠しいか。とてもじっとしておれない気持、わかるだおる。七、八日頃、阿佐ヶ谷に映る。そうしたいと思っている。今朝、千代の手紙みた。昨日一日、手紙こないかと待っていたので、今朝とても嬉しかった。(中略)千代の幸福には責任持ちたい僕の気持わかってくれるだろう。ほんとに千代の幸福に指一本でも触れるものがあったら――僕の体で千代一人大丈夫まもる。会わないと、会いたい気持ちがいっぱいになるので、手紙までこんなこと書いて了う。(中略)眼をつむっていると僕の心は愉しい幸福でふくらんでくる。抱きしめたい気持。(中略)子供など出来なくっていいんだよ。子供の分も千代を可愛がる。少し乱暴だろうか。この頃、会っても、別れる時、淋しくて駄目。先だっての夜など、じっとしていられない様だった。 虎彦出典:
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