京都ほど桜の似合う町並みがあるでしょうか。
桜の花は鳥居などの朱色によく映えますね。
私が地元の神社で奉仕していた際、お守りの朱色は魔除けの意味があると聞きました。
あの鳥居などの朱色もおそらく魔除けの意味が込められているのでしょう。
しかし朱色というのは不思議ですね。桜に似合えば雪の白にも似合うのですから。
四、この寺の冬が好きだと聞いたから
先ほど朱色は雪にも似合うと書きました。
私は冬、雪の降りしきる貴船神社へ行ったことがあります。
京都の鞍馬にある神社です。
階段の両脇に並ぶ灯籠が見事で、思わず息をこぼしました。
雪の冷たさを耐えるようにじっとそこにある灯籠たちの姿を、私は一生忘れないでしょう。
私がこの句を読んで真っ先に思い浮かべたのはその景色です。
春の京都も素晴らしいですが、もしゆとりができたらぜひ冬の貴船神社へ行って雪に似合う朱の色を見てみて下さい。
五、逢へぬ日を重ねて古都の月あかし
「月あかし」をどう解釈するかによってこの句の向こうにみえる景色が変わってきそうですね。
恋において逢えない時間をどう過ごすかというのは究極の課題のような気がします。
私が書いた文豪たちのラブレターに関する記事をお読みいただいた方は、それと照らしあわせてみるとうなずいて頂けるのではないでしょうか。
愛しい人に逢いたいというのは古今東西、老若男女問わず共通の願いのようです。
六、紅葉明りに見せ合ひて恋みくじ
恋の句に選定するか、正直に申し上げると最初は迷った句です。
神社で恋みくじを引く恋人同士はないだろうと思ったのです。
しかしすぐに情景が浮かびました。
友達と恋みくじを引きながら、そのまぶたに浮かぶ人の姿があるのだろうと。
そうすれば立派に恋の句ですね。
紅葉の上から、女性たちが頭を寄せあってわいわいと楽しそうに恋みくじを見せ合っているのが浮かびます。
七、ひぐらしに止めて帰るといふ人を
ひぐらしというのはご存知の通り蝉ですが、季語としては秋です。
ですからこれは秋の句なのですね。
秋の夕暮れといえばどうしても感傷的な思いになるのはやめられません。
みなさんも一度は味わったことがあるのではないでしょうか。
ひぐらしの声が聞こえると、どうして心が寂しくならずにいられましょうか。
愛しい人との別れの場面にそれがあればなおさらです。
八、雪の宿隣の部屋の灯が消えて
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