「中村ですが……」
夜、突然電話がかかってきました。
「あっ、一朗?」
女子高生だった当時は、ケータイではなく家の電話です。
一朗というのは、中学で仲の良かったグループのメンバーでした。
「違う」
電話の主は消え入りそうな小さな声で否定します。
私は少し考えてから尋ねました。
「義弘くん?」
電話の向こうでため息がもれます。
「いや……」
一朗でも義弘くんでもない中村くん!? そんな知り合いいたでしょうか?
「かけ間違いじゃ……」
その言葉をさえぎって相手が言い放ちました。
「賢治です!!」
(中村 賢治!?)
やっぱり知らない名前です。
でも相手はかけ間違いではないと断言しているので、その言葉を繰り返す勇気はありません。
「中学3年生で同じクラスでした」
(えー! だれよー)
同じクラスだった中村 賢治くん!? 必死で考えますがわかりません。
やはりかけ間違いだと思われたのですが突然、思い出したのです。
そう言えばいました! 中村 賢治くん! 勉強でもスポーツでも目立ちませんでしたし、地味というか特に印象に残らないタイプでした。
何よりほとんど話したことがないのです。
「忘れちゃっててごめんね」
何かフォローしなきゃと言う思いで発した言葉でしたが、余計に彼を傷つけたに間違いありません。
恐らく彼は私に告白してくれようとしたのでしょう。
日曜日は予定があるか確認してきましたから。
それなのに私は、なんてひどいことをしてしまったのでしょうか。
もちろん、彼が悪いわけでも私がいけないのでもありませんが、あまりにも後味が悪すぎます。
開口一番、あんたなんか大っ嫌いと言われた方がましかもしれません。
少なくとも覚えているのですから。
電話による告白方法は、こんなリスクもあるのです。
稀なケースとも言えませんよ。
信じてもらえないかもしれませんが、私は記憶力がよい方です。
細か~いところまで覚えているタイプなのです。
聞くところによるとそれが女性の特徴らしいのですが、これがもし男性なら?
もしかしたら彼もあなたを覚えていないかもしれません。
告白方法としては、最悪な気もしてきましたが時と場合によっては有効です。
なにしろ1対1。
電話とはいえ意中の人を独占できるのですから。
上手くいったときの幸福感は計り知れません。
天国か地獄。
究極の選択ですね。
中村賢治くんというのは、エピソードを語るためにつけさせていただいた仮名ですが、彼の本名はもう一生、忘れることはないでしょう。
思い出すたび激しい自己嫌悪にさいなまれます。
こんな告白方法を選んだ彼でさえ、予想もできなかったに違いありません。
恐らく彼も思いだすたびに恥ずかしい悔しい思いをするでしょう。
告白方法の選び方によっては、こんなしこりを残すことにも。
電話による告白方法。
言うまでもありませんが私は個人的にお勧めしません…。
メリット
なんといっても、適度な距離感がメリットだと思われます。
直接会って言ったほうが気持ちは伝わるかもしれないけど、怖くて会えない。
そんな方におすすめの方法です。
また、見た目に左右されないのもメリット。
自分の容姿に自信がない、直接会ったら緊張で変な動きをしてしまいそう!など。
電話という壁を一枚挟むだけで、普段言えないことも言えそうな気がします。
自分の欠点をうまくカバーできるかもしれませんね!
デメリット
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