「お側に置いてくださいませ」
現代で言うと「そばにいたい」という言葉ですので、表現についてあまり差異は感じられません。
しかし「お」をつけ、「(そばに)置く」という言葉を使うのは、相手にすべての決定権があるように見えます。
一途な思いを伝えるにはぴったりな言葉ではないでしょうか。
また、現代でも何かに打ち込まなくてはならず恋に構っていられないという御仁に、「私のことは気になさらずとも結構です。ただ、お側に置いてくださいませ」と伝えるだけでも相手は、前だけを見据えて戦っていけるのです。
そんな過酷な状況にさらされることは現代では少ないにしても、「仕事で忙しい」という男性にこう伝えることで、彼は自分のなすべきことに精を出せるようになるかもしれません。
待つ時間は長けれど、それをそばで支えたいと願えるような相手と出会えたら本望ですね。「あなたさまをお慕いしております」「慕う」は様々な意味で使われることがありますが、こんな風に使うと風情がありますね。
もともと尊敬していた人への思いが、形を愛へと変えた時、まさにこの言葉が使えるのではないでしょうか。
「今日まであなたへの思いをしのばせてきましたが、もう我慢なりません」百人一首でも平兼盛の歌で「しのぶ」という言葉を使った恋の歌が読まれています。
しのぶれど 色に出でにけり わが恋(こひ)は ものや思ふと 人の問ふまで 平兼盛出典:http://www.ogurasansou.co.jp/site/hyakunin/040.html
ひと目を憚る恋の時、「しのぶ」という言葉を使うことで一人ずっと思い悩んできた様が思い浮かぶのは、
中等教育で習ったこの歌が思い浮かぶからではないでしょうか。
「この恋慕の情を、告げることができて悔いなどございません」
「気持ちが伝えられただけで十分だ」と自然に言えるような恋は、果たして幸せな恋なのでしょうか、それとも。
誰かを恋い慕うとき、苦しみと幸せが波のように繰り返して胸に押し寄せてきます。
それでも人が恋することをやめないのは、その先に幸せがあると信じているからではないでしょうか。
それはある意味で最も尊い性善説の形ですね。
誰かと一緒になることで幸せになれるなんて、相手に疑いの曇り一つもないのですから。
「ずっとあなたに愛慕を寄せておりました」
長いこと慕い続けた相手にようやく愛を伝えることができたとき、そっと合わせてこの言葉をささやいてみてください。
「恋慕(れんぼ)」は「横恋慕」などでよく聞きますが、「愛慕(あいぼ)」は現代ではなかなか聞かない言葉ですね。
「愛慕」を辞書で引くと「愛して、懐かしみ慕うこと」と出てきます。この「懐かしい」という言葉、多くの意味を持つ多義語で「過去を思う」だけではありません。「好意を持ち近づきたいと思う」「魅力的である、すぐそばに身をおきたい」という意味も含まれていますから、恋にまつわる諸感情と「懐かしむ」という言葉は切っても切り離せない存在でしょう。
いかがでしたか。
次回は告白のシーンだけでなく汎用的に遣えるような奥ゆかしい恋の言葉をセレクトしてご紹介しますね。
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