心から伝えようとしても、耳を貸してくれさえしなかった彼
どこかのタイミングで私はコラムに書いたことがあると思うのですが……。
私は大学に入って最初に付き合った彼氏に、これまで自分が信じていた「性善説」を裏切られたことがあるんですよね。
誰にでも心から感じた気持ちや思いは、言葉を尽くせば伝わると思っていたのです。
絶対に通じると思っていたし、通じないのは言葉が足りないからだとか、自分の伝え方が悪いのだとか思っていたんです。
私は小学校から中学校はずっと周囲の人々があまり変わらない環境で生きてきて(エスカレーター式の学校でした)、しかも隣を見ればなんでも一言二言でわかってくれるような妹がいる。
高校もそれほど自分と意見の違う人がいる環境ではなかったので、誰かとそりが合わなくなるようなこともなければ、自分のいうことをちゃんと理解してくれないような相手もいなかった。
そういう状況が恵まれているとは知らずに育ってきたので、私は自分が心から思っていることや言いたいことは、相手にちゃんと伝わるのだと思い込んでいたわけです。
でも実際に、大学に出てそれは大きな間違いであると気づいた。
最初はすごくショックでした。彼氏という、もっとも身近な存在の一人なのに、私の言いたいことを理解してもらえない。
何度自分なりに論理立てて説明しても、何もわかってもらえなかったんです。
この話の発端は、彼が大学のテストでカンニングをしていたことでした。
私は彼に大学のテストでカンニングをするということが、どうしてダメなのか、なぜあなたにやってほしくないのか、そういうことを熱心に伝え続けました。
彼は、きっと浮かれていたのでしょう。
私の主張に対して真剣に向き合うこともせず、私が心の底から熱心に伝えているというのにその熱意すらひとつも彼に届かない。
彼にこの熱意が伝わればきっと話も聞いてくれる、論理立てて説明しているから必ず伝わる、彼は必ず反省してカンニングをやめてくれる、と思っていたんですよね。
でも、全く通じなかった……、というか話も聞いてもらえなかったんです。
そのときは、彼が大学のテストでカンニングをするということは、世間的に見てダメな行為だったから、彼にそういうことを止めて欲しいと懇願した自分の方が正しいと思えたけれど、これが二人の間で白黒付かないことだったとしたら?
そう思うと、私はこのとき自信を持って彼に訴え続けてはいなかったでしょう。
そのとき周囲の人間に言われた言葉で、非常に心に残っているのがいくつかあります。
中でも「自分の言葉が100%相手に伝わるとは限らない」という言葉と、「伝わるってこれまで信じ続けられたのは、よほど環境が良かったから」という言葉。
これは、当時の私にとっては非常に衝撃的だったのです。
他人との関わりにおいて大切なのはタイミングだと思ってみる
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