かといって、これが全て人間の心の責任なのかと言えばそうではありません。
これは日本という国が抱えている根源的な問題だと思うし、国民が疲弊していることを示す一つの証拠だと思うのです。
少なからずエンタテイメントや、日本の商売上手な企業にも責任があるでしょうし、そもそもそんなことを言い出したら日本の歴史に責任があるわけです。
たとえば、私にとって身近なVRゲームを引き合いに出して話をすると、アダルトゲームとVRは相性がいいからとアダルトエキスポなども開催されていましたよね。
別にそれを楽しむことはかまいませんが、確実に生身の人間同士のふれあいを減らす原因の一端をこの先担っていく分野でしょう。
技術が進化し、人間はその恩恵を受ける。
AIが将来人間の頭脳労働を奪うのではないかという話もありましたが、技術革新は人間に様々なメリットとデメリットを突きつけてきます。
企業の成長のため、さらには社会貢献のために売上を出そうという努力が、しまいに人間の首を絞めることになる。
この技術の進化が生み出したデメリットのしわ寄せについて、今真剣に向き合っている人がいるのかしらと思ってしまいます。
そりゃゲームは売れるように、人間の心に快楽を与える作りになっています。
だから私の周囲のゲーム好きは快楽には弱いけれども、逆境には弱い（私の周囲にいるゲーマーは、みな学が低く、ゲームしかしてこなかったからそういう人間になったのだと思いますが）。
ゲームやアニメの世界で確実に自分の意に反しない、むしろ期待以上の快楽をもたらしてくれる存在がいれば、生身の人間との不確実で裏切られるリスクも孕んだ関わりなんてコスパが悪く見えて当然でしょう。
念のためここで再度言っておきますが、私はそういうエンタテイメント業界の人間なので、ゲームやアニメを否定しているわけではありません。
ただ売るだけであればそれが正解なのですから。
でも、そこに対して誰がどんな風に責任を持つの？という話なのです。
SNSが発達して自分の『好きなもの』を中心につながるコミュニティでは、自分の好きなことだけやっていればいいし、それだけしか知らなくても話ができるから余計な情報収集は不要だし、価値観の違う人との衝突もなかなかおこりにくい。
なんなら、顔を突き合わせているわけではないからどんな言葉でも吐ける。
そういうコミュニティの中で形成された人格や人付き合いに対する考え方が、他人と深く関わり合いながら、何度も衝突し、不確実な要素を含みながら積み上げていく生身のコミュニケーションを遠ざけているといえるのではないでしょうか。
私は出来る限り、他人と深く関わることを避けるような人に対して、その人自身がもっとコミュニケーションを他人と取りたくなるように仕向けています。
それは相手の周辺環境を整備したり（たとえばグループでの作業であれば、その子とフィーリングの合いそうな子を配置したり、その子の作ったものを手放しで褒めてくれる子を配置してみたり）、自分が先んじて作品に対する批判を受けに行ったり、様々な方法です。
しかし、一度心を閉ざしてしまうとそのラクさを変えようとする人はなかなかいなくて、私は何度も骨折り損をしてきました。
こういう私のやり方自体が、時代にそぐわなくなっているのだと思ってしまうと、悲しい気持ちもありますが、時代が正解だというのであれば、そちらに従えない私のほうが爪弾きにされる存在なのでしょう。
ただ、……もし誰かに伝わるならと思って、今もこんな風に未練たらしく書き続けているのです。
本当はすごく面白いんだよ
感情が揺さぶられたり、不確実な要素を含みながら転がしていくコミュニケーションの輪に入ったりするのって、すごく面白いよと。
おかげで私は、たくさんの信頼できる人たち、同じように他人とちゃんと意見を交わし合いながら、ときにぶつかりあいながら一緒に歩いてくれる人ができたよと、伝えたいのです。
まあ、そんなふうな複雑なコミュニケーションがなくても心から信頼できる人がいるというのであれば、これ以上のことは言いません。
それが自分に適したコミュニケーションの取り方だったのだと、納得していただいたほうが良いかと思います。
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