この運命、そう、この縁を信じよう。
彼女は、彼に、メールしました。
もちろん、彼は、すぐに返信。
「スカイタワーもきれいだね」
「うん、ここから見るとね」
彼からの返信で食事に行ったふたり。
お互い和食好きということで、魚料理がおいしいお店に彼が予約。
美味しい物をいっしょに「おいしい」って感じられる。
これって、すごい縁じゃない!運命じゃない。
もう、彼女は舞い上がりっぱなし。
彼も、まんざらでもない様子で、日本酒を飲んでいる。
「好きな食べ物が一緒の女性っていいよね」
「あっ、私もそう思ってた」
胃袋は掴むものではなく、ひょっとして同じタイプの胃袋の人が運命の相手かも!?
ここで彼女が提案したのは、会社のBBQに彼を招待すること。
もちろん、彼は快諾。
あぁ、もうゼッタイ!この再会は運命だわー。
彼女は、もうトロトロです。
縁切り女、登場。
さぁ、待ちに待ったBBQです。
彼女は、この縁をカタチにしようと朝から気合いいっぱいです。
お気に入りのデニムは彼女の脚を引き立ててくれるし、白のオフショルダーのセーターも色っぽい。
ところが、会場に表れたのは、彼と悪魔女子。
「今日は、ありがとう。部下っていうか、後輩も連れて来たよ」
「すみませーん!無理やり来ちゃいました」
「あっ、どうぞ、楽しんでいってくださいね」
なんじゃ、この展開は!
この前の食事でいい感じと思っていたのは私だけなのか。
そうです!
彼は運命なんて何も感じていません。
男はもっとシビアな世界で生きているからです。
特に、彼のように成功をするために努力を重ねてきた男はなおさら。
彼は幼稚園のころ、泣き虫で小学生に入っても目立たない存在。
そんな彼を今の彼に変えたのは、他でもない彼自身。
日々の努力から身に着けたものなのです。
だから運命よりも自分の努力を信じます。
そんな彼が付き合っているのは連れてきた後輩、悪魔女子。
そうじゃないと、BBQに連れてきません。
でも、悪魔女子に運命を感じているわけでもありません。
彼が悪魔女子と付き合うきっかけは、言うまでもなく悪魔女子の猛アタック。
悪魔女子は、いつも彼の言うことをうんうん頷くYES!マン。
「これ、おいしいね」
「うん、おいしい!わたしも好き」
「この服、いいと思わない?」
「うん、すごくいい!思う思う」
なんでもかんでも肯定ちゃん女子なのです。
そうすると、彼は思うのです。
俺たち気が合う!
人は誰かに肯定されると疲れません。
むしろ、気持ちがとても安定するものです。
その安定を運命と思うのも、これまた運命。
どうやら彼は、悪魔女子ちゃんが引いた運命のレールに乗ってしまっているようです。
一発逆転になるか!?
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